モノ魔リスト

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必要ではない。だがよく考えてみると、たしかに必要ではないようだが愛すべきモノたち。

アメリカの広告事情 - 他社を名指しで比較してみる

 

日本において何らかの製品の広告を目にする時、そこに『当社比』という文言を見かけることがある。既にある自社の類似商品を引き合いに出し、「この新製品はウチの既存のアレに比べてこんなにすんごいんですよ」という手法である。

 

ただ内実の話をすれば、自社よりは他社の類似商品を上回る製品をつくって然るべきだし、普通その手のベンチマークは製品開発の時点で実施しているはずだ。そうでなければ競争力など保てない。

であれば、本当は自社の製品と比較するのではなく他社の製品と直接比較し、その上で「うちの方がすごいんじゃぞ」と言いたいところだろう。こういった「競合他社の類似製品と自社の製品比較し、自社の優位性を示す」タイプの広告は『比較広告』と呼ばれる。しかし日本においては、この比較広告はあまり見られない。

 

比較広告それ自体がご法度なのかというと、現在は別にそういうわけでもないらしい。ただ野放しかというとそういうわけでもなく、『比較広告ガイドライン』なるものが存在する。これによると、比較広告が不当表示にならないためには、下記の3つを満たす必要があるという。

(1) 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること。

(2) 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。

(3) 比較の方法が公正である事。

 

筆者が初めてこのこれらの条件を見た時に感じたのは、『どこまでがセーフでどこからがアウトなのかちょっとわかりにくい』ということである。

例えば一時期話題になったソフトバンクの「つながりやすさNo.1」広告は、確かに客観的な調査をもとに数字を出していたようだが、しかしそれを『適正』に引用していたかというとやや怪しいようにも思われている。この手の判断は「解釈の仕方によって異なる」のだろう。

したがって本当は比較広告をやりたいが、ガイドラインに触れるのも面倒だしということで、現実的な落としどころとして『当社比』ベースの広告が採用されているというのが日本の事情なんではなかろうか。

 

 

ところで本日、筆者がミシガンの事務所で受け取った広告はこう仰っている。

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日本語で表現するならば、

「まだCOMCASTなんかに大金払ってるのー?信じられなーい!」

といったところだろうか。このCOMCASTというのは米国のケーブルテレビ最大手の大手企業で、日本ではユニバーサルスタジオジャパン (USJ) を買収した企業としても知られている。そして情報通信も手掛けており、つまるところWOW!Businessの競合相手である。隠語を使うわけでもなく、におわせるわけでもなく、白昼堂々大手を振って競合相手を名指ししているわけである。

これは広告の表面であるが、多分裏面を見たら自社の価格とCOMCASTの価格が横並びに比較されていて、その脇にWow!You Save $10!!Fabulous!!!とかいったゴキゲンな科白が並んでいるのが目に浮かぶ。というより、比較広告がどうとかいう以前に挑発のように見えなくもないが、とりあえずこれで問題ないらしい。

 

 

ちなみに興味本位でDr. Googleに「比較広告」と日本語で尋ねると、

・比較広告って問題あり?

・「比較広告」不当表示にならないためには

といった手合いの情報が出てきやすいように思う。

 

一方で"Comparative Advertising"、つまり英語で訊くと、

・効果的な比較広告を書くための方法

・比較広告を検討する必要性

といった手合いのものが多く出てくるように感じられ、心なしか両者の姿勢の違いというか、そういったものが透けて見えてくるようだ。

 

ともあれ、こういう日常生活の中でも違いがみられるというのは、なかなか興味深いものである。

そう感じつつ、持っていた広告をゴミ箱へ落とした。