中国の武漢に端を発した新型コロナウィルスに押され、米国ミシガン州より帰国してからはや1年近くが経過した。
米国駐在はもはや過去の話と言っていいほどかもしれないが、それでも駐在時の話を訊いてくる御仁がちらほらとある。
よく訊かれる質問として、「一番衝撃を受けた事は?」なるものがあるが、これに対する返答はこの記事とかこの記事が相当する。アレはそうそう忘れられるものではない。
一方、「一番面白いと思った事は?」と訊かれるとやや逡巡するが、筆者はこれに「スーパーマーケットのランク分けが露骨な事」と答えている。
アメリカのスーパーマーケットの紹介記事への違和感
「アメリカ スーパーマーケット」などと検索すると、やれおすすめはここだとか、人気ランキングはこうだ、などといった記事がヒットする。
これらの記事そのものは有用ではあるのだろう。しかし在米時にミシガン州内の数多くのスーパーに足繁く通った、自称スーパーフリークの筆者からすると、どうにもこれらは奥歯に物が挟まったような気がしてならない。
というのも大体の記事において、実際にスーパーに行けば誰しも感じられる、決定的とも言っていい、とある違いに対する説明が抜け落ちているからである。
日本とアメリカのスーパーマーケットにおける決定的な違い
日本とアメリカのスーパーにおける決定的な違いとは、アメリカには露骨といっていいほどスーパーの『ランク分け』が存在することだ、と筆者は考える。
要するに、経済的に豊かな人が行くためのスーパーと、中流層が行くスーパー、そしてあまり裕福でない層が行くスーパーがはっきり分かれているということだ。
こういうと、「日本にも激安スーパーとか高級スーパーとかがあるではないか」と反論をされそうなものである。
確かにそれはそうだが、しかし筆者の経験ベースでは、アメリカのランク分けは日本のそれより遥かに露骨に「見て取れる」のだ。
『ランク分け』の興味深い点
このランク分けについて興味深い点は、「スーパーは沢山あるが、日常的に使う店は人によってほぼ決まっている」ということだ。
例えば普段Walmartに行く人はWhole Foodsには行かないし、逆にいつもWhole Foodsに行く人はWalmartには縁がない。
そしてどこに行くかは、ほぼその人のお財布事情に依存する。
例えば筆者の勤務していた事務所では、筆者以外全員が現地スタッフであった。マネージャーが1名、スタッフレベルが3名。同じ会社の同じ事務所ではあるが、マネージャーとスタッフとの間で、普段どこのスーパーに行くか?と聞くとやはり明確に分かれるのだ。
無論、マネージャーとスタッフとで給与レベルに開きがあるから、である。
これは筆者の事務所に限ったことではなく、現地に住む人であればほぼ似たような傾向があった(筆者の知りえる限り)。
そういう意味では、日常的に10近いスーパーを使い分けていた筆者はやや異質な存在であったろう。
筆者としては単に「トマトはここが安い」「牛乳はここが旨い」という感じで通い分けていたのだが、これは筆者が異邦人だったから故の奇行だったかもしれない。
感じ取れる『ランク』の違い
更にこのランクについて興味深い点は、先述の通りそのランクが「見て取れる」ことだ。
つまりそのスーパーに一歩足を踏み入れれば、その雰囲気からランクがそれとなくわかってくる。
外観や内観、商品の陳列、客層やスタッフ、そして駐車場の様子など。これらはある意味、商品の値札よりも声高にそこのランクを語りかけてくるのだ。
特に客層と駐車場はかなり雄弁である。客層については、多くの場合体型や服装および言動がランクを反映する。駐車場は車種がどうこうというより、駐車場にダメージビークルがあるのかないのかでおおよその検討がつく。
あとは以前記事にしたが、レジ袋にもその片鱗が見受けられる。これも非常に興味深い。
人気≠高ランク、お洒落≠高ランク
よく日本人駐在員が好むスーパーとして出てくるTrader Joe's(通称トレジョ)は、実際にお洒落で現地の若者からも支持されている。実際、消費者による満足度ランキングなどでも上位に位置している場合が多い。筆者も時たま利用していた。
しかし筆者の感覚によれば、ここのランクとしては中程度のイメージだった。お洒落で人気であっても、高ランクと言うわけではないということだ。
なお、この人気ランキングというのもなかなか興味深い。というのもこの手のランキングには、低ランクなスーパーや、逆に極端に高ランクのスーパーはあまり出てこない。上位に位置するのは大体、中程度のランクのスーパーばかりな印象だ。
理由はいくつか考えられるが、要するに食べログの星などとは大分異なるスコアということだ。あちらは評価が高ければ高いほど往々にして超高級店になっていくが、アメリカの高ランクのスーパーはランキングに載りすらしないのだから。