モノ魔リスト

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必要ではない。だがよく考えてみると、たしかに必要ではないようだが愛すべきモノたち。

ミシガン ダメージビークルコレクション

 

ミシガンに赴任した当初に感じた事のうちのひとつに、

破損した車が街中を平然と走っている

というものがある。

 

もちろん日本の町中においても、破損した車というのはしばしば観測されるだろう。ただ普通、事故などで損傷した後には、遅からず元通りに修復されるのが多数派ではなかろうか。

例えば、日本における死亡ひき逃げ事故はほぼ100%の検挙率を誇るというが、これは事故現場の遺留品から対象車種を絞り込み、それらの持ち主を地道に1台1台あたる『車当たり捜査』と呼ばれる手法の賜物ということである。過去の膨大なデータの蓄積により、わずか1mmの塗装片からでも車種を特定できるそうで、これにより高い検挙率を誇っているようだ。

が、この方法は恐らく「日本において、破損したまま走っている車は少ない」という前提のもとに成り立っている手法のように思える。極端な話だが、例えば1mmの塗装片から特定に至った車種の持ち主100人をあたった結果、50人の車が何かしら似たような破損をしていた、となったらなかなか難しいのではなかろうか、という事である。

 

いつも通り話が逸れてしまったようだが、ともあれここミシガンにおいて、何かしら破損した車が走っている確率というのは日本の比ではない。というより毎日見かける。

毎日見かけるお陰で、数か月もすれば感覚が狂うせいか見慣れてしまうのだが、数か月後に帰任を控えた今ここにおいて、初心に戻るという意味も込め、

筆者の独断と偏見によって破損具合を勝手にレベル分けした

ミシガン ダメージビークルコレクション

なるものをここに垂れ流してみたい。

 

 

ダメージレベル1: 部分的かつ軽微な損傷

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もっとも軽微なダメージレベル1。こすったと思しき傷と、そこから派生したと思しき腐食といった程度。このレベルは極めて一般的で、毎日どこでも見ることができる。アパートの駐車場にも沢山止まっているので、毎日見ざるを得ないというのが正しいが。

 

ダメージレベル2: 部分的に軽微な欠損を伴う損傷

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ダメージレベル2では、部分的なパーツの欠損が観測される。ただしその範囲は、外観に支障はあるが走行には支障なしと思われる程度に限定されている。これもかなり一般的なダメージレベルで、街を走っていれば普通に見ることができる。

 

ダメージレベル3: 部分的だが、軽微ではない欠損を伴う損傷

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外観のみならず、色々と支障をきたしそうな程度に損傷しているものをダメージレベル3と規定した。この例で言えば、ライトが機能しているのかどうかがやや怪しい。またレベル2に比べてかなり損傷部位が広く、内部の構成が剥き出しになっているのが特徴的。このレベルになると少し出現率が下がり、通勤中に1日に1~2回すれ違うかどうかといったところ。

 

ダメージレベル4: 部分的だが、走行時に支障のある損傷

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レベル3とやや見分けがつきにくいが、ダメージレベル4は走行時に明らかな支障が生じると判断される個体に適用される。上記の写真で言うと、片方のライトが使用不能になっていると判断されるためレベル4に分類した。このレベルだと更に出現率は下がる。通勤中は多分あまりすれ違わないだろう。歴戦の猛者が集うウォルマートの駐車場に停める際、近くに1台あるかないかという程度だろうか。

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こちらも左側のライトが稼働しないであろうことが推察されるため、恐らくレベル4に分類されるだろう。まあこちらの場合、一番気になるのは剥き出しでぷらぷらしているコードの方だが。

 

番外編: 補修をしているが隠しきれない損傷

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レベル5へ移る前に、一つ番外編を挟みたい。基本的にダメージビークルは補修されてないからダメージビークルなのだが、補修が施された跡のあるものがたまに見られる。ただ補修と言ってもそのレベルは様々で、例えば写真ような手合いは結構散見される。このガムテープが意味を成しているのかどうかは不明だが、白いボディにわざわざ黒いガムテープが使用されている点に芸術性が感じられたということで番外編に収録された。

 

ダメージレベル5: 全体的かつ走行に支障があり、かつ痛々しい損傷

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レベル4の時点で走行に支障があるのだが、ダメージレベル5はそれに加え、全体的かつ痛々しい損傷として分類した。

写真の車の場合、ライトが稼働しないレベルの損傷に加えて内部は剥き出しに、ボンネットは閉まらずエンブレム部分も抜け落ちている。加えて写真では見えないが両サイドのドア付近が変形し、リアのフレームにも歪みが見られた。前後及び左右にダメージが見られることから、複数回の修羅場を乗り越えた傑物ということになるだろうか。どこまでを部分的・どこからを全体的と捉えるかは諸説あるが、例えば番外編で紹介した白カムリは両サイドに破損が見られるため、敢えて分類するならばレベル4と5の中間ということになるかもしれない。

このレベル5ともなると流石に珍しく、歴戦の猛者が集うウォルマートの駐車場を練り歩いても、ひょっとすると見つからない場合もあるかもしれない。

 

ダメージレベル6: バックミラーで一目見ただけで、戦慄が走る損傷

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レベル6ともなると、もはや部分的とか全体的とか走行中の支障がとかそういう分類ではなく、生理的に恐怖を感じるかどうかで規定される。写真は路肩に停車中にバックミラーで撮った極めて不鮮明なものだが、迫りくるその姿は明らかに只者ではない。晴れているにも拘らず、何故かワイパーが作動している点もいたずらに恐怖を煽る。追い抜かれざまに確認すれば、予想通りボディ全体に激しい損傷が見られ、後部座席左右のガラスが一部斜めに欠け落ち、恐らくその部分にビニールと思しき何かが貼ってあった。正直言って何故平然と走れているのか不思議なレベルですらある。

このレベルはなかなか見られず、歴戦の猛者が集うウォルマートの駐車場ですらこれまで数回しかお目にかかったことが無い。筆者の場合は近隣住民にこれのオーナーがいるらしく、3日に1回くらいのペースですれ違ってしまうが。

 

補足:もらい事故を避けるために

このブログでは珍しくやや真面目な話になるが、ダメージビークルレベル4以上の車は往々にして動きを予測するのがかなり難しい。特にどちらに曲がるのか、車線を変更するのかしないのか、とかいった情報が乏しい場合が多い。ミシガンに明るい諸兄姉であれば、「そんなの普通だよ、だってウィンカー出さない人多いじゃん」と思われるかもしれない。確かにそれはその通りなのだが、ダメージレベル4以上の車に関しては出す出さない以前の問題で、そもそも物理的に作動しない事が多いのである。

従って運転中に損傷の大きい車を見かけた場合は避けてやりすごすか、少なくとも車間を離す事をお勧めする。特に高速道路上ではできる限り距離を取った方が吉である。そもそもダメージビークル自体が『過去に事故を起こしたことがあります』という事実を折り紙付きで太鼓判を押されているようなものだから、ある意味では黒塗りの高級車よりも危険と言ってもいいだろう。

 

ともあれ、以上が筆者の独断と偏見および恐怖によって分類された、ミシガンダメージビークルコレクションである。

だいたいレベル5までならば歴戦の猛者が集うウォルマートの駐車場意図せず開催されているため、ミシガンに来訪された際には一見の価値ありのコレクションである。もらい事故だけは気を付けたいが。

 

 ※この記事は一部脚色が加えられておりますが、ある程度は事実です。

  

追記

ミシガンに住んで数十年のマネージャーにこの写真を数枚見せた上で、

「この手のダメージビークルは危険ではないのか?ミシガンでは違法にならないのか?」

と訊いたところ、

「いやいやお前にはそれが安全に見えるのか?どう見ても安全じゃないし違法だろう。それだといつ警察にしょっぴかれても文句は言えないぞ。

 だから、長いトラベルをする場合は一応直しておいた方が良い。」

とのこと。

 

なるほど。

長いトラベルをする場合は、か。