モノ魔リスト

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必要ではない。だがよく考えてみると、たしかに必要ではないようだが愛すべきモノたち。

ミシガンで2週間リモートワークをした感想

 

中国の武漢に端を発し、爆発的な広がり方を見せる新型コロナウィルスに対し、米国が緊急事態宣言を発してからはや2週間。その広がりは留まる事を知らず、特に米国ではかなりのスピードで蔓延してしまっている。

時を同じくして、多くの取引先をはじめ筆者の勤務するミシガンの事務所でもリモートワークが始まった。ちなみにカフェ等でリモートワークされる方もおられると思うが、現在ミシガンでは飲食店関係はすべて閉鎖されているため、実質的には在宅勤務である。

また、後にミシガン州政府から『Essential Workers以外はリモートワークに切り替えるように』と指示があったため、現在では指定された業種以外の事務所は基本的に閉じている。

 

そういうわけで、在宅勤務を開始してから早くも2週間が過ぎようとしているわけだが、在宅勤務とかテレワークとかいうと、やれ『海外は進んでいる』とか『日本も追いつかなければならぬ』というような風説を耳にする。筆者は国内外含めてこれほど長期の在宅勤務をするのは初めてだが、実際のところ海外の状況はいかがなものなのか。

ついてはミシガンにおける筆者の在宅勤務について、特に脈絡もなく5つのセクターに分けてみた。

 

1. 移行自体はすぐできる

もともとリモートワークがある程度浸透している米国だからか、移行自体はすんなりできる。実際、筆者の事務所が在宅勤務ベースに移行するときも、午後3時頃マネージャーが『明日から在宅勤務でよろしく』と一言であった。VPNアクセス権さえあれば会社のサーバーにアクセスできるので、個人の会社パソコンを持ち帰ればいいというわけである。

そしてその会社パソコンには、Webミーティングの環境が一通り搭載されているから、ソフト面ではミーティングにもそれほど支障はない。画面見せたければ画面共有をすればいいし、個人間なら電話をしながらという方法もあるし、ファイルのやり取りも色々方法がある、という格好である。

また米国はサイン文化で知られるが、その分DocuSignのようなシステムも普及しているため承認作業もそれほど困らないようだ。

とはいえ、日本の承認作業とはそもそも性格が異なることから、システム面の問題だけではないことは付け加えておきたい。例えば、いわゆる”稟議”は強固な階層主義と超合意主義という2面性を持つ特殊な文化であり、米国には見られないからである。

 

2. 生産性はやや落ちる

システム面では特に問題が無い事は既に述べた通りである。しかしそれによって仕事の効率が変わらないかというと、そうは問屋が卸さない。やはり少し落ちることは付け加えなければなるまい。

筆者の場合は日系の機械メーカーに所属し、主に米国の現地顧客への対応窓口として勤務しているため、いわゆるホワイトカラーと呼ばれる職である。従って前述の通りパソコンがあれば仕事はできる。メールはいつも通りできるし、その気になればミーティングもパソコンを通じてできる。できるが、やはり意思疎通に時間はかかる。自分の語学力の低さも原因の一つである事は認めるが。余談ながら、ミシガンのインフラは全米でも弱い方で、回線の調子は基本的によろしくない。

あとはいわゆるブルーカラーに分類される業種にいたっては、そもそも在宅勤務が成立しないということがあるだろう。筆者のいる会社であれば、工場勤務の人々がそうである。それもあって、本社の方はレイオフを実施したと又聞きした。

また家で働いているという事は、家族と同居しているならば家族がそこにいるという事である。特に小さい子供がいる家庭は結構多く、電話会議中に後ろの子供の声が聞こえたりという事はままある。別にそれ自体は一向に構わないのだが、間違いなく普段の作業環境とは異なるわけで、それによる影響はあるだろう。

結果として、多くの案件の進み具合がやや鈍化するのは、ある程度仕方がないと言える。

 

3. 少し退屈

こんなことを言っては不謹慎かもしれないが、やはり同僚がいないというのはやや退屈である。ちょっとした相談も気軽にできないし、時折ある勃発する雑談タイムのようなものも結構得るものが多かったのだな、と気づかされるほどである。

もちろん米国では"Be friendly, but not be friends"と言われるように、同僚同士は仕事上の付き合いに過ぎないという共通観念があるからして、標語通りドライな関係が保たれるのが普通である。しかし、その"Be friendly"すら難しくなるのが在宅勤務、ということが言えようか。

 

4. スーパーでレジを待つとき、ガチマスクをつけた人に後ろを取られる

米国ではこういうマスクは一般的ではない、と言う話は風の噂で耳にしていた。

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これは紛れもなく事実といえる。少なくともこの状況下のミシガンでも、この手のマスクをつけている人は殆どいない。その少ない着用者も、いわゆるアジア人っぽい見た目の人が殆どである。思えばWHOから緊急事態宣言が発令された2002年のSARS龍興寺も、普通のマスクをつける米国人は殆どいなかった。

 

代わりに最近増えてきたのが、この手のマスクである。

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いわゆる防毒とか防塵マスクといった手合いだが、ここでは特に理由もなくガチマスクと呼称した。

どうも米国のメディアでは、医師がはっきりと

「普通のマスクはコロナウィルスに効果が無い」

といった内容を提唱しているようで、これはその影響かもしれない。本気のあなたはこのマスクをつけなさい、というところだろうか。日本でやっていたら正気を疑われかねないように思うが、最近はこれを割合頻繁に見かけるのである。そしてやはりと言うか、その着用者には白人系あるいは黒人系の人が多い。というかアジア系でつけている人を見たことは今のところない。

そういう状況であるから、先日Walmartに並んでいた時にはこのガチマスクをつけた男性に背後を取られた。

極めてステロタイプな反応で恐縮だが、この時ばかりは人質の気持ちが少しわかった気がした。

 

5. スーパーでレジを待つとき、ガチマスクをつけた人に前後を挟まれる

もはや言葉で説明するまでもないが、つまり先日Plum Marketで遭遇したのが下記の状況である。

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※Social Distancingについては前回記事を参照されたい

 

極めてオセロタイプな反応で恐縮だが、この時ばかりは盤上で踊る気持ちが分かった気がした。

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最終的に何故かオセロになってしまったが、以上がミシガンにおける2週間の在宅勤務を終えての現在の感想である。

何にせよ、早い事自体が終息することを願ってならない。