メガネ・サングラスのライセンスブランドについて垂れ流したい
今から10年以上前だろうか、当時アパレル企業を経営していた知己が
「バーバリーブラックレーベル等を狂信する連中とは。いやはや。なかなかどうして御しがたい。」
と零したのを聞いたことがある。言うまでもなくこれは、いわゆる『ライセンス契約』による所謂『ライセンスブランド』に対する敵視からきた発言だろう。
そんなバーバリーブラックレーベルもその歴史の幕を閉じてから、はや4年と少し。日本におけるライセンス契約の代名詞とも言えるこのブランドの活躍の甲斐あってか、最近ではファッションブランドにおけるライセンス契約の存在については市井の知るところになってきたように感じなくもない。そしてこのライセンス契約が知られるにつれ、ややもすると否定的な意見が大勢を占めてきたようにも思う。
試しに『ライセンスブランド』とDr. Googleに訊ねようと画策しようものなら、
何と二つ目には「ださい」ときている。
なるほどださいのか、と興味をひかれるままクリックすれば、
このように「買っちゃダメ」と如実に警告するブログがヒットするほどである。浅学なる筆者も拝読してみたが、ライセンスブランドに関してかなりの積怨をお持ちのようだった。
が、それはそれとして、筆者としては個人的に3件目の題名にある『日本人』のワードにこそ目がいった。
厳密に言えば、『日本』の部分にである。
というのも、『ライセンスブランド』というのは何も日本に限った話ではない。現在筆者は米国ミシガンに在住しているが、出退勤時のあまりの日差しの強さに耐え兼ね、また予期せずカジノで勝ってしまった反動でSunglass Hutにてサングラスを購入した。
購入当時の筆者としては、単にセール品だったので購入に踏み切っただけであったのだが、眼鏡の似合うフレンドリーな女性店員がその会計時、
「素晴らしいチョイスね。プラダはあのレイバンよりもずっと品質が良いわよ。」
とにこやかに言ってきたので、何やら妙な胸騒ぎを覚えてしまったものである。
というのも、いかに浅学な筆者と言えどもLUXOTTICAの存在くらいは知っている。少し前に福井めがね工業が同グループによって買収された話が、日本でもそれなりに報じられたほどには有名な企業だ。
その上で、同社が手掛けるラインナップの中にはレイバンだけでなく、プラダも含まれている。ならばその時Sunglass Hutに並んでいたレイバンやプラダは、いずれもルックスオティカ製のはずである。
プラダの方がやや値段は高いとはいえ、レイバンも十分に高級品として製造されているはずで、その状況下でプラダの方だけ露骨に品質を良くするなんてことはあるのか?と根も葉もない疑念を抱いてしまった、というわけである。
まあそのような筆者の偏狭かつ陰険な疑念はさておくとしても、思えば筆者はルックスオティカくらいしかまともにアイウェアメーカーを知らない。そもそもそれはそれでどうなのか。
そこで本記事では、アイウェア界隈でどんなメーカーが犇めいていて、それぞれどんなハウスブランドとライセンスブランドを持っているのかについて、ぼんやりと調べながら垂れ流してみたい。
各社のハウスブランド
まずは主要各社のハウスブランド(保有ブランド)一覧から。(2019年12月時点)
今回はLuxotticaから順にSafilo, Marchon, Rodenstock, De Rigo, Marcolinをピックアップした。いずれもアイウェアメーカーとして著名な企業で、恐らくおおまかにはシェア順に並んでいるはずである。ちなみにシェア順で考えるならばFielmannも入ってくるはずだが、キャッチーなライセンスブランドが見当たらなかったため今回は除外した(そもそも主な情報源がドイツ語というのも辛い)。
各社色々と自社ブランドを擁しているようだが、まずはレイバンは別格として、次いでオークリーやオリバーピープルズ、あるいはポラロイドにスミスやポリス、といったところは日本でもよく見られるところである。最近はペルソールなども有名だとかなんとか聞いた気もする。シェアを調べるのは今回の趣旨から外れるが、レイバンは日本市場だけでなく、世界的に見ても突出したシェアらしいという事は付け加えておきたい。
各社のライセンスブランド
続いて各社がライセンス契約しているブランドに移りたい。(2019年12月時点)
ライセンスブランドだけあって、見覚えのある名前が一気に増える。
まずは最大手のルックスオティカ (Luxottica)。バーバリー、ブルガリ、シャネルにドルチェ&ガッバーナ。筆者もセールにつられて購入したプラダとその妹分ミュウミュウ、そしてティファニーと錚々たるブランドが立ち並ぶ。更にアメトラで有名なブルックスブラザースとラルフローレン、若い女性に人気のマイケルコースやトリーバーチとも契約しており、隙のない布陣である。
続いてサフィロ (Safilo) はというと、ディオールにフェンディ、ジバンシィとLVMH系のハイブランドが並ぶ。ケイトスペードやトミーフィルフィガーといった若者向けブランドも同じくラインナップとしているようだ。米国の老舗百貨店の代表格であるサックスフィフスアベニューが名を連ねているのも興味深い。
マーション (Marchon) はクロエ、エトロ、サルヴァトーレフェラガモといったハイブランドに加えて、近年になってDKNYとポールスミスのライセンスを取得したようである。
やや耳なじみのないブランドが並ぶデリーゴ (De Rigo) だが、ハイブランドのダンヒル、ジュエラーのショパールに加えて、これまた若い女性に人気のフルラを手中に収めている。
マルコリン (Marcolin) はバリーやゼニア、モンクレー、トッズ、そして何よりトムフォードとこれまた有力どころが多い。筆者にとっては意外だったのが、契約数だけならルックスオティカを抜いて最多らしい事だ。
雑感
こうしてぼんやり眺めてみると、アイウェアにおいてはかなりの数のブランドがライセンス契約を結んでいるように感じる。何かブランド名のサングラスを購入したとしたら、いずれかのアイウェアメーカーによってライセンス生産されたものである可能性が高いともいえる。ただこれは考えてみれば当然かもしれない。例えばもともと生地を得意としたアパレルブランドがアイウェアも得意かというと、恐らくそんな事はないだろう。餅は餅屋と言うが、既に実績を持っている専業メーカーの方が理に適っているであろうことは想像に難くはない。
そういう事情もあってか、ひとたびライセンス契約が終了すると、他のアイウェアメーカーに鞍替えして再契約するという事も結構あるようだ。上でも少し触れたが、ポールスミスとDKNYはもともとルックスオティカと契約していたところ、現在はマーションと手を組んでいる。
ライセンスじゃないブランドは?
こうなると逆に疑問として浮上してくるのは、
この一覧にないブランドは全部自社で生産していると考えて良いのか?
という事だが、どうもそういうわけでもないらしい。
例えばグッチはかつてサフィロとライセンス契約していたが、2016年にこれを終了した。同様にモンブランもマルコリンと長らくライセンス契約を結んでいたようだが、2018年には終了した模様で、一覧表にその名は確認できない。
では契約終了後、それぞれ自社で一貫生産し始めたという噂は見当たらず、じゃあアイウェアから撤退したかというとそうでもなく、これまで通り製品は発表されている。
つまり既存のアイウェア専業メーカー以外にライセンス契約先がまだ存在しており、筆者は間抜けにもそれを見落としていたということらしい。そして実際に少し調べてみると、やはり有力なライセンス契約先として2社浮上した。
しかもこの2社はいずれも新興勢力にも関わらず、既存勢力を脅かすほど強大な影響力を発揮しているとの見解も見られた。そして何より、既存のアイウェア専業メーカーと比較して、その成り立ちをやや異にしているようだ。
筆者からするとこれらはなかなかどうして興味深く、折角なのでもう少し追いかけてみたい。
従って、次の記事ではこれらの新興勢力2社について新たに一覧をつくり、ライセンスブランドについてもう少し垂れ流していきたい。
Raretsu
イリノイ生まれの時刻の合わせ方【ジェファーソン ミステリークロック】
さて、このGolden Hourに関しては2回にもわたって偉そうな事を冗長に垂れ流してきた。
ところが、実はこれまで一番基本的な時刻合わせの方法については理解していなかった。流石に3記事目ともなるとそれを書かねば、もはや何たるかも判らぬというものであろう。
正直このような趣の強い物のオーナーであれば、時刻合わせなど一瞥しただけで理解してしまう慧眼の持ち主ばかりなのかもしれないが、筆者の抜け落ちてゆく記憶をどうにかつなぎとめるという目的で、今回も何とはなしに垂れ流してゆきたい。
字面だと存外にわかりづらいため、最初からこうした方がよかったような気もするが、よくある後の祭りと言うやつだろう。
時刻の合わせ方
基本的にはまず分針を合わせ、その後に時針を合わせるのが主流のようだ。
どちらを合わせるにせよ、まずは電源プラグを抜いておく必要がある。
分針の合わせ方
分針の合わせ方は至って簡単で、物理的に時計回りに回して合わせるだけである。
例えばこの写真では、だいたい2時を指している。
これを2時40分にするには、ガラスの前側にある分針を40分の位置まで時計回りに、物理的に押してやる。押すときにはやや抵抗は感じられるが、一度回し始めればそれほどでもない。ちなみにこの時は分針のみが回り、ガラスはついてこない。
これにて分針合わせは終わりである。
ちなみに分針を動かしてやっただけだが、時針も適切な位置に自動的に移動しており、きちんと2時40分を指している事がわかる。また、分針を動かしている時に時針は触ってはいけないようである。時針がきちんと正しい位置に追従してくる理由はその構造の妙によるものだが、筆者の残念な頭ではいまいち理解できていない。ともあれ分針合わせの際に気を付けるべきは、
①必ず時計回りに動かすこと
②合わせている間に時針を触らないこと
である。というより構造上、相当力を入れないと反時計回りには回せない気もするが。
時針の合わせ方
先ほどの分針合わせで、現在の時刻は2時40分となっている。
ここから1時40分にするには、ガラス裏側にある時針を時計回りに1回転させてやる。時針を回すときには殆ど抵抗はなく、手を離せば適切な位置へ勝手に落ち着く。
ちなみに時針は時計回り・反時計回りどちらにも回せるようである。また、1回転が1時間に相当するため、12周させると元の位置に戻ってくる。これもその構造の妙によるものだが、筆者の残念な頭ではいまいち理解できていない。
動かし方
電源スイッチのようなものは特になく、プラグを差し込んでやればめくるめく夢の世界である。
愉しみ方
愉しみ方は人それぞれである事は言うまでもなかろうが、ともあれこの現代ですら単純にインテリアとして十分に通用しそうなこのルックス、どうにも癖になりそうである。
Raretsu
仄かな夜光をたたえしイリノイの使者【ジェファーソン ミステリークロック】
eBay大使の粋な計らいで、満を持してイリノイよりこのミシガンへと降り立ったGolden Hourについては、先日の記事にてその経緯を冗長に垂れ流した。
しかし、これも垂れ流した通り説明書は付属していなかったため、使い方をはじめとして情報収集する必要がある。
ところが実際に情報収集を千鳥足に進めてみると、雑学的なものから、多少留意すべき点までいくつかの興味深い情報が見受けられた。
本来であれば購入の前にもっと十全たる調べをしておくべきであろうし、そもそも他のオーナーの諸兄姉は既にご存知とは思われる。また、このような辺境ブログに記したところで何の役に立つものかという思惑もあろうが、主に記憶の抜け落ちやすい筆者の備忘録としても、いくつか記録を残しておきたい。
夜光塗料に関する情報
製造年代の大まかな判別方法について
ボディの材質について
ガラスの材質について
周波数について
恐ろしいサイトについて
夜光塗料に関する情報
まずこのGolden Hourには、針あるいはインデックスに夜光塗料が使用されているものがある。購入してから気づいたような愚鈍は筆者くらいであろうが、ともかく実際に暗闇に晒してみるとこのようである。
光ると言ってもかなり控えめで、正直これを恃みに時刻を判断するシチュエーションが訪れることはあまり無いだろう。ただ一応留意すべき点は、夜光塗料が使用されているという事、それ自体である。
夜光塗料はいくつか段階を経て進化している。現在はとある日本企業が開発した『ルミノバ』と呼ばれる放射性物質を含まない塗料が主流であるが、これ以前はラジウムやトリチウムといった、いわゆる放射性物質とされるものが含まれている場合もあった。実際、アンティーク或いはヴィンテージ時計などにはしばしば見られる仕様である。
そしてこのGolden Hourは、およそ41年間生産され続けたロングセラーの製品であるが、最後の生産は1991年8月とされている。一方ルミノバは1993年に開発された塗料であるため、この時計には使われ得ない。つまりラジウムの使用が禁止されるまでの期間に製造された個体については、ラジウム等の放射性物質を含む可能性があると推測できる。
実際に調べた限り、複数のサイトで”ラジウム”の使用に関する言及があった。ラジウム226の場合、その半減期はおよそ1600年であるから、つまりはまだまだ現役である。
また、Youtubeにて"Jeffeson Golden Hour"などと検索すると、その線量を計測している動画も見つけることができる。
とはいえ先にも述べた通り、年代の古い時計にこの手の塗料が使われている事はしばしばある。上の動画でも言及されているが、家に置いたらその瞬間にどうにかなるとかそういうそういう話ではない。もちろん、
毎日抱きしめて寝る
とか、
塗料の部分を舐めて溺愛する
といった事は当然避けるべきであろうが、そもそもそんな諸兄姉はおられないだろう。
また、1960年代以降(恐らく1965年以降)のモデルについては、そもそもラジウムとは異なる夜光塗料が使用されているようであるだ。
製造年代の大まかな判別方法について
先日の記事でも多少触れたが、裏蓋の仕様によってある程度製造年代が特定できるようである。古い順で、
赤茶色の蓋(PATENT PENDINGと記載のあるもの)
赤茶色の蓋(PATENT Numberの記載のあるもの)
黒色の蓋
となっており、特にPATENT PENDINGの記載のあるものは1950年代だそうである。また黒色の蓋のものは後期モデルで製造年月が刻印されているため、何年の何月に製造されたものかが判別可能ということらしい。
筆者が購入した個体の裏蓋は黒色で、『J8206』との刻印があるので、1982年6月製造のようだ。
1991年までの製造であったはずだから、筆者のものはかなり後期の作にあたるようだ。保存状態の良さから見ても頷ける。
ボディの材質について
このGolden Hour、持ってみると意外にずっしりとする。
この重さから察せられる通りボディは金属製であり、年代によって移り変わりはあるものの、基本的には一部の駆動部品に鉄製部品が、残りの大半は亜鉛合金で構成されているようである。表面はGold-Plated、即ち金メッキによるもので、これがGolden Hourの名を呼ばせる所以にもなっているようだ。
ガラスの材質について
腕時計であれば、風防に使われるのは主にサファイアガラス・ミネラルガラス(クリスタルガラス)・プレキシガラス(プラスチック)等が主流であるが、このGolden Hourに関しては、殆ど一般的な窓ガラスと同様の材質で構成されているとの事である。
周波数について
これは購入時にもよく指摘されている事で、浅学なる筆者も流石に承知の上で購入したが、この商品は60Hz専用である。米国で使用する分には全く問題ないが、日本で使いたい場合は60Hz地域かそうでないか、を確認しなくてはならない。
ちなみに筆者の日本における住まいは、残念ながら関東地方である。
恐ろしいサイトについて
さて、筆者の興味をひいた観点のみについて記載をしてきたが、いくつもあるサイトの中にあって、突出して情報量の多いサイトが1つ存在する。その情報量たるや、ちょっと常軌を逸していると言っても過言ではない範疇にあるほどである。いずれにせよ、少なくともこういった冗長なブログを参照するよりは、圧倒的かつ決定的に有用であることは火を見るよりも明らかである。
そういえば色々垂れ流しておいて未だに時刻の合わせ方がピンと来ていないが、まあ些末な問題だろう。
Raretsu
イリノイ生まれの輝ける使者【ミステリークロック ゴールデンアワー】
筆者の務める事務所の隣のテナントで不動産業を営むDaniel(本名)が、ある日こんなジョークを教えてくれた。
"Stop complaining about your life. There are literally people living in Illinois."
(筆者意訳:人生にあれこれ文句言うのはやめにしようぜ。この世界には、あのイリノイにマジで住んでるヤツだっているんだから。)
何故50もある州の中から、選ばれたのはイリノイでしたか?と訊けば、
”アメリカでは、東海岸あるいは西海岸寄りほどほど刺激的で、内陸へ行くほど退屈、という認識が何となくある。”
”そういう意味では、内陸ならどこの州でも当てはまるから、イリノイにしたのは何というか、気分だな。”
ということらしい。
だが。
果たしてイリノイ州はそれほど退屈であろうか?
と筆者は疑問を呈さずにはいられない。
何せイリノイ州は、彼の有名なJefferson Golden Hourが生まれ出でた地であるのだから。
Golden Hourと言えば、イリノイ州にて創業したJefferson Electric社が約41年間にも渡って生産したミステリークロックである。生産期間の長さに普及帯の価格(最初期で$20程度)だったことも相まって、相当数が流通したという。その見た目も一役買って、今でもミステリークロックと言えばまずいの一番に名前が挙がるものと憶測する。
曲がりなりにも米国の地に降り立ったならば、ゴールデンアワーの3つや4つは買って帰りたい、と考えるのは至極自然な話である。以前も少し書いたが、暇を見つけてはアンティークショップに足を運んで探していた。
だが探せど探せど、腑に落ちる個体というのは意外なほどに見つからない。
状態が良いと思えば$200を超えていたり、$40と聞いてみれば見るも無残にメッキが剥げていたり、$60で綺麗かと思えばコードが切断された不動品であったり、となかなか落としどころが見つからないのである。
ついにはトロント観光の際、名店と名高いシンシア・フィンドレー・アンティークに寄った際、ご主人に相談してみた。
”今は扱ってないなあ。eBayにはないのか?”
との天啓を頂いてしまった。
そんな経緯で苦節半年、ついに入手に漕ぎ着けたわけである。
eBayで。
配達スタイルの安定感はさておき、このイリノイから発送された輝ける物品、早速開封してみると、予想以上になかなかどうして状態が良さそうである。
本当にゴールデンアワーを愛してやまない諸兄姉であれば、
”裏面に『PATENT PENDING』って書いていなければダメだ!”
(書いてあれば1950年代製造の品、つまり初期品という事らしい)
と居丈高に叫ばれる事請け合いであろうと察しはつくが、すこぶる志の低い筆者としては何となく見た目が綺麗で動けばそれで良い。
価格も送料込みで$60程度。アンティークショップの相場から考えると、かなりお手頃だったように感じる。
サイズもそれほど大きいわけでもなく、米国内発送につき送料もお手頃。
年代や形状違いも視野に入れれば、バリエーションも豊かである。作動音は聞こえないほど静かだし、いくつあっても困る物でもなし、むしろ浴びるほど集めてみたくもなる、そんな愛らしさがあるといっては過言ではある。
強いて言えば、説明書がないので
”どうやって時間を合わせるのか皆目見当もつかない”
というのが目下の問題だったりもするが、まあ些末な問題だろう。
Raretsu
ビジネスカジュアルとは一体何か? - 米国赴任準備に潜む恐るべき伏兵
アメリカはミシガンへ赴任する少し前、現地の営業&人事マネージャーと電話会議による面接をしたことを思い出す。
そこでは仕事に関する内容はもとより、カジュアルな内容もやり取りされたわけであるが、その中で『服装に関する規定』について話が及んだのをよく覚えている。
筆者が
「米国の服装規定はどうなっているのか?」
と尋ねると、
「こっちには制服みたいなものはないから、Business Casualでよろしく。それと、客先用にスーツは必要だから何着か持ってきたほうがいいね。」
「あと金曜日はJeans Dayといって、ジーンズで出勤してOKだ。まあ変えるのが面倒だったら、いつも通りBusiness Casualでもいいけどね。」
との回答を得たわけである。
つまるところ、筆者は渡米にあたり
Business Casualな格好
を最低限用意する必要が出てきたわけである。
では、Business Casualとは一体どんなものか。
『敵を知り己を知れば百戦殆うからず』という語句は今時未就学児でも諳んじるほどだそうだし、であればまずは敵情視察としゃれこむべきだ、と筆者は愚考するに至った。
まずはいつも通りDr. Googleに
『ビジネスカジュアル』
と検索してみると、このような有用な画像が見つかった。
多少幅はあるが、基本的にはジャケパンスタイルを指すもののようだ。
ところで筆者が赴く地はアメリカであるが、アメリカと一口に言っても地域性が色々とあるらしい。
なんでも『東海岸から西海岸へ行くにつれてスーツを着る人が減る』という噂もあるとかいう話である。
筆者が赴任するのはミシガン、即ちどちらかというと東海岸に近い方である。
ならば『ややコンサバ気味なビジネスカジュアル』が好ましいという事だろうか。
これを踏まえ、赴任に揃えていくつかの対策アイテムを持っていくことに決めたわけである。
赴任前の対策
まずはシャツだが、無難にセミスプレッドからセミワイドくらいのカラーの、ソリッドあるいは柄の主張の強くないものを選択。
アイロンを丹念にかけるのも面倒なので、適当にイージーケアのものをまとめて購入した。
パンツに関しては、ひとまず無難にグレーとベージュ、それにネイビーを選択。
これに加えてスーツのパンツもあるからして、最悪現地で困ったとしても、ある程度の誤魔化しは効くだろうと踏んだわけである。
ベルトはスーツ用にセリエを1本だけ持参し、残りは現地調達とした。
次にジャケットだが、ひとまずネイビーとブラウンを持参。
最悪スーツのジャケットでお茶を濁してもいいし、これも現地調達が可能だ。
加えて客先訪問用のスーツが必要である。
赴任時期に合わせ、新たにチャコールグレーで仕立ててもらうことにし、既に持っているネイビーと合わせて都合2着を持っていくことに決めた。
ネクタイも柄がそれほど強くないものを3本。
ネクタイピンは元々使っている衣飾屋のもの。レンチが特にお気に入りである。
靴は多少迷ったものの、最終的に「米国だし多少は遊んでも許されるだろう」と根拠不明の持論が鎌首をもたげ、最も数の多い茶系をメインに持参。
以前の記事でも言及したが、筆者は私服でも基本革靴オンリー(運動する時はもちろん運動用のシューズを履くが)のため色々混ざっているが、何とかなるだろうと憶測。折角なので米国発祥とされるタッセルローファーも持っていくことにした。
セーターはややきわどいが、ネクタイさえ締めていれば一応ビジネスカジュアルの範疇に収まるらしい。
よって、柄を控えたソリッドなものをいくつか持参。
時計に関しては、とりあえず左の2つなら大丈夫だろう。右端は週末に着用すれば良い。
鞄はこの記事で垂れ流している通り、ずぼらの救世主たるこれで解決である。
これらを組み合わせ、下記のようなスタイルでの通勤を想定。
少なくとも週5日着回せれば、当面のところはなんとかなる。
とはいえこのスタイルをもってしても、
「なんだそれは?どこがBusiness Casualだ!出直してこい!」
と言われてしまう可能性もないではない。
だがその場合は、当座スーツ通勤でやり過ごさせてもらおうという魂胆である。
完璧とは言えないまでも、渡米前対策としては上々ではなかろうか。
そんな感慨を胸に抱きながら、この筆者はデルタ航空の直行便に飛び乗ったわけである。
赴任後の状況
デルタ航空の直行便から米国の地に降り立ち、現地に初出社した筆者。
その筆者が月曜日の朝に目の当たりにしたのは、
ピンクの柄シャツを着用するマネージャーであり、
ビビッドなカモフラ柄セーターと白スニーカーを合わせた男性スタッフであり、
ライダースジャケットにヒョウ柄のインナー着こなす女性スタッフであった。
原因と反省
筆者はどこで道を違えていたのか。
まず最初のしくじりポイントは、『ビジネスカジュアル』と検索してしまったことである。
というのも、現地のマネージャーは『ビジネスカジュアル』とは一言も言葉を発していないのだ。
彼は、『Business Casual』と言ったのである。
ということで今一度『Business Casual』と検索してみると、このような有用な画像を発見した。
この時点でジャケパンではなく、ネクタイも必須ではなく、ついでに柄物のニットもOKという事がわかる。
また更に調べていくと、そもそも個々の定義にもかなり幅がある事がわかる。
いずれにせよ、『ビジネスカジュアル』と検索した時よりも、よりカジュアルよりな印象を受ける。
次のしくじりポイントは、『そこは日本ではない』という認識が足りなかったことだ。
そもそもが曖昧な定義である『Business Casual』であるわけだが、
その概念を日本で適用した場合と米国で適用した場合とで、
導き出される結果が大きく変わってくる。
つまり、
客先訪問時にはスーツを着てネクタイをきちんと締めるのが当たり前の日本と、
客先訪問時でもネクタイどころかジャケットすら着ないのが普通なアメリカでは、
『曖昧が許す範囲』すら変わってくるということである。
スーツに関して言うにしても、顧客によっては『スーツを嫌う』ところもあるので、着ること自体滅多にない。仮に着る場合でも、ネクタイはまず締めない。これは日本においてはあまりないと言えるだろう。
こうして、
現地の状況に全く合わない服装をしこたま携えた筆者
がここミシガンに推参するに至ったわけである。
正しい『傾向と対策』の立て方
では本来、こういった自体を避けるために何を為すべきであったのか。
まず取れる対策として、マネージャーが『Business Casual』だと言った時、
具体的には?
例えば今日はどんな格好してる?
色は?
形は?
といったことを訊ねておくべきだったのだろう。
ときには物事の仔細に立ち入ることによって、悲しい勘違いを避けることができる。
あるいは
「アメリカ的な服装に溶け込みたいから、参考にスタッフの格好か何か見せてもらえないか?」
とでも聞けば良かったかもしれない。
写真というやつは結構雄弁で、一瞥しただけで何となく感覚というのが掴めたりする。
最近聞いた例としては、スケール付きの空撮写真で人数を把握するという方法があるらしい。例えばデモ等の参加人数に関して、主催者側と警察側の発表値が著しくかけ離れている事が往々にしてあるそうだが、そういう時に使えばどちらが嘘をついているかが凡そわかるという方法があるらしい。
初めて聞いた時はなるほどと思ったものだが、そういう意味で一枚でも写真を見せてもらったならば、現地の感覚が分かったかもしれない。
ちなみに金曜日=Jeans Dayについて、筆者は単純にジーンズを穿いてきてOKな日という認識でいたが、これもどうも違ったらしく、実際には
『何でもOKな日』ということらしい。
いかなジーンズデイとはいえ、事務所のマネージャーが
明らかに特定の野球チームを意味するウェア(しっかり野球帽も着用)
で出勤してきたときは流石に仰天したものだが、
「どうしたんだ?落ち着けよ!今日は金曜日だろ?」
と当の本人に冷静に言われてしまったのだから、もはや何も言うことはない。
結局のところ、『Business Casual』を事前に正しく捉えるには
・定義が極めて曖昧なことを知っておく
・現地の状況を具体的に確認しておく
この2つを押さえておく必要があるかもしれない。
ちなみに、『私服』のつもりで持ってきたこの辺のアイテムたちだが、今では『Business Casual』として平日に大活躍している。
Raretsu