モノ魔リスト

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必要ではない。だがよく考えてみると、たしかに必要ではないようだが愛すべきモノたち。

米国駐在者が帰国後に感じた変化

 

気づけばミシガンから帰国して2カ月以上、隔離期間を経て日本の職場に復帰してから数えても1カ月以上が経過した。

 

海外子会社から日本の親会社に帰ってくるとなると、勤務地や同僚などの周りの状況から事内容に至るまで、すべてがドラスティックに変化する事になる。それはあらかじめ予想していたのだが、しかし実際に返ってきてみるとそれ以外にも様々な変化があった。しかもそれらの変化がどうにも妙な風向きが多いもので、記録がてら羅列しておくことにしてみる。

 

帰国直前からの唐突かつスムーズな社宅入り

実は帰国2カ月前までは、(恐らくは経費の関係で)借り上げ社宅へは入れないとの通達を受けていた。筆者の場合、この社宅に入ることができなければ、自分で家を借りたとしても家賃補助は出ず、すべて自費で賄わなければならない。他の似たような境遇の駐在員は普通にその社宅に入れるのに、である。この点については過去何度か抗議したが、奇天烈な社内規定を盾にすべて却下されていた。

ところが帰国1カ月前になって、直属の上司より突然「社宅に入れるように特別裁可を諮るからサインをくれ」と物々しい書類が送られてきた。言われた通りサインを送ると、ものの数日で社宅へ入れることになったのだ。

日系の駐在員をされていた方ならば『米国子会社サイドから見て、本社がたった数日で執行役員の判を押してくる』ということが、いかに日本企業では珍しいことかお分かりになるだろう。何らかの意思が背後になければ起こり得ない事だ。

しかも最初に紹介された物件を見てみると、どうも通常の国内勤務の人が入る社宅の平均家賃を1.5倍ほど上回る好条件のものばかりであった。これまで幾度となく筆者の嘆願を全否定してきた人事部の為す所業とは思えないほどの好待遇である。そも、経費削減が常態化し、更に中国は武漢から始まった例のウィルスによって財政が着々と悪化している弊社のなす事とは思えない。無論条件の良い物件を選び入居したわけだが、このあたりで妙な風向きを感じたものである。

 

他の課の重要そうなメールがBCCで入るようになる

筆者は日本にいた時は製品開発の部隊におり、帰国後も変わらず同じ部署に戻った。それはいいのだが、帰ってからというもの『他課の重要そうな案件のメールがBCCでちょくちょく入る』という現象が発生し始めた。しかもその多くは大体身に覚えのない物であり、例えば他課が担当する海外の重要顧客向けだったり、執行役員に何かを諮る根回しの依頼メールだったり、どうにも限られた人に宛てたような物ばかりなのだ。しかも技術営業の部隊からそういうメールが入るのはまだ理解できるが、完全な営業部から送られてくるのは意図が読めない。筆者の帰国時にどの課に戻るかについて、いくつかの課で揉めた話を小耳に挟んだが、恐らくその辺も関わっての事だろう。

ともあれいたずらに仕事を増やすつもりはないし、筆者にはひとつ考えがあるため何が送られてきてもひとまず静観しているが、やはり妙な風向きを感じずにはいられない。

 

ドイツ子会社への時期駐在の打診

正直、これはやはり来たかと言う感じではあったが、3年間のドイツ子会社への駐在の打診が帰国後すぐに出てきた。時期は来年頭からとの話だった。聞けば、現在事務所にいるベテランの駐在員2人を日本に帰国させ、代わりに筆者1人を送る計画らしい。

だが人づてに聞いた話によれば、その2人がいるにも拘らず現在その事務所はうまく回っておらず、文字通りてんてこ舞いという感じらしい。その状況をもってベテラン2人を帰らせてそれよりも若い1人送るというのは無謀でしかない気がするが、そういう常識的な考えはパートナーまで届かないらしい。恐らく、ベテラン駐在員2人分の給料を払ってもどうせ事務所が回らないのならば、そこそこ若手を1人送ってその辺の資金を浮かせてしまえ、という算段だろうか。逆転の発想とは恐ろしいものである。これに関しては、妙な風向きをとっくに飛び越えてただの安直の極みといった気もするが。

 

これらの妙な風向きに関しては、その形質は様々なれど『社内での評価が上がった』ために起きているという事が言えそうである。実際に過去に似たような境遇で駐在していた人に聞くとこれは『それなりにある話』らしい。直接海外顧客を相手にしていたわけだし、異文化への適応性やら英語力やらもそれなりにあるだろう、という想定がぼんやりとあるのだろう。本人からすれば、随分とありがた迷惑な話だが。

 

 

ちなみにこれらの現象は、実際にその駐在員の異文化理解力や英語力がどの程度なのか、ということについては関連がない場合が多いようだ。つまり、その人(この場合は筆者)が本当に優秀かどうかは問題ではないという事である。

そもそも、駐在員という人たちが一様に優秀かというとそんなことは無いだろう。特に英語力に関しては現地で色々と感じたことがあるため、この辺についてはまた記事をしたためたいところだ。