モノ魔リスト

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必要ではない。だがよく考えてみると、たしかに必要ではないようだが愛すべきモノたち。

アメリカのオフィスにおける休憩時間の考え方

 

どこかの企業で会社員として働いていれば、大体においてお昼の休憩時間なるものが設定されている。
筆者が日本のオフィスに務めていた際、それは12時からの45分間として設定されていた。多少の多寡や時間帯の差異はあれど、一部の特殊な企業を除けばどこも似たような様相だろう。
そしてもちろん日本だけではなく、国外の企業においても同様にお昼休憩に相当するものが存在する。例えば現在筆者が務めるここミシガンのオフィスでは、12時から13時までが休憩時間として設定されている。

 

が。

実際にその『運用実態』に目を向けてみると、やはり国内と国外とでは少し違いがある。

 

日本の事務所における筆者の休憩時間

開始時間と終了時間は明確に45分と規定され、なおかつ遵守されている。会社の社食を使ったり、自宅からお弁当をこさえて持参したり、外食しに行ったりとまちまちであるが、基本的には昼食を摂る時間である。

お昼を早く済ませて、空いた時間で軽い運動をする人や将棋を打ったりする人、あるいは仮眠を取る人も一部見られるが、それらの割合が過半数を占めることはない。

また、開始時間が多少遅れたとしても、終了時間は大体の場合守られる。終了時間を自分の都合で勝手に延長するような行為は、上司や周りから注意されるだろうし、自らの評判を下げることに直結しうる。

 

米国のオフィスにおける筆者の休憩時間

開始時間と終了時間は12時から13時までの1時間、と一応規定されてはいるものの、あまり重要視されていない。例えば外食に行くのに道が混むのが嫌なら、11時半に出ても良い。そしてきっちり1時間というメリハリがついているかというとそうでもなく、多少前後する事が多い。というより大体少し伸びる。帰ってくるのが多少遅れたとしても、マネージャーがとやかく言ってくることは基本的にないし、そもそもマネージャーが少し遅れて帰ってくるものだから、気づきさえしないこともままある。
社食が無いため、日本と同様に家から弁当を持ってくる人や外食に出る人もいるが、一旦自宅に帰って摂るという人が結構多い。日本に比べて米国は外食が非常に高額であるため、毎日というのは普通の従業員には難しいし、朝起きて弁当をつくるのも面倒である。となれば、家が近いんだから一旦帰ればいいじゃない、というのはひとつの最適解に成り得るのだ。

また最近流行りつつあるのが、『お昼休憩の1時間をまるまるワークアウトに費やす』というものである。これにおあつらえ向きの“ランチタイムワークアウト”なるものが、近所の複数のジムで開催されている。これはトレーニング時間は約45分、着替えと移動を含めて約1時間で完遂できるから、休憩時間にぴったりだよねというコンセプトである。
1時間いい運動をした後事務所に帰ってきて、仕事をしつつ昼食を取れば問題ないという寸法だ。逆にワークアウトに行く前に、仕事をしつつ先に昼食を取るのもアリである。昼休憩の時間外に昼食を取ることになるが、仕事が滞りなく進んでいるのであればとやかく言われるようなことはない。

 

 

これら2つの実態を踏まえると、
「米国の休憩時間のほうが自由度が高くて羨ましい」
とか、
「日本は時間に対して型にはまり過ぎているのではないか」
とか、ややもすると
「日本のそれはまさしく軍隊の在り方だ!軍靴の足音が聞こえてくる!怖い!」
とか訳のわからない方向に行ってしまう諸兄姉は…流石にいなかろうが、ともあれ米国オフィスが時間に対してあまり頓着していない印象が目立つだろう。


ただしその自由さにかまけてこの制度を活用しすぎ、よしんば業務に支障をきたしてしまうと、ある日突然首を切られるのもまた米国である。表立って本人に問題がなかったとしても、不景気になった瞬間こういう風に人を即切りしてしまうのだから、その変わり身の早さは推して知るべしである。日本の企業であれば、即日解雇なんてことはよっぽどの事をしでかさなければ起こることではない。


結局のところは、管理の主体が自分寄りなのか会社寄りなのかの違いであって、どちらにしても『仕事上で管理能力のない人はお呼びでない』ということに大差はないということだろう。