米国には多岐にわたるスーパーマーケットがあり、筆者も週末になるとよく食材の買い出しに赴く。
品質はそこそこだがとにかく安いWalmart(ウォルマート)、
日本人にもトレジョとして有名なTrader Joe's(トレーダージョーズ)、
何となくお洒落なNino Salvaggio(ニノサルヴァッジョ…と読むのだろうか)、
そして値段は高いが高品質なものが並ぶWhole Foods(ホールフーズ)、
あたりにはよく訪れる。
スーパー毎にプライベートブランドを展開していることもあり、それぞれ品揃えは意外に結構違う。そのため1日に複数のスーパーをはしごすることもしばしばである。
ただ、日本人となるとやはり日本の食材とか調味料も欲しくなる。上記のスーパーではあまり扱っていないため、そういう場合に一番確実なのは日本系スーパーのOne World Market(ワンワールド、ワンワ)である。
ただしここは筆者の住まいからはやや遠く、頻繁に訪れるのはやや骨である。
こういう場合に便利なのが、中国系或いは韓国系のスーパーである。この手のスーパーは、大抵の場合は日本系の食材もそれなりに取り揃えている。筆者の行動範囲で考えた場合、H Mart(エイチマート)がそれにあたる。
このエイチマートはアメリカやカナダに出店している韓国系のスーパーで、全米で60店舗以上展開しているそうである。
ここであれば大体の物は手に入るわけで大変重宝するわけだが、その店内で見える日本語やその解釈がちょっと面白いので、垂れ流したい。
まずはこちら。
国名がついたパンと言えば、なにをおいてもフランスパン(バゲット)が有名だろう。がしかし、ジャパニーズパンなんてあったかな?と思って棚を覗いてみると、
どうもこのへんがジャパニーズパンの範疇になるらしい。天然酵母パンは何となくわかるが、大福とかカステラまで含まれるとは恐れ入った。そもそもカステラはポルトガルから伝来したものだったような気もするが、日本で独自の進化を遂げたからということだろうか。
続いて肉売り場へ行くと、こんなコーナーがあった。
ここにはSHABU SHABU MEATとか書いてある肉が置いてあるに違いないと思えば、
そういうわけではないらしく、牛胸肉のスライスが置いてあった。ちなみにアメリカの薄切り肉は一般にかなり厚いので、これだとしゃぶしゃぶには不向きである。
じゃあしゃぶしゃぶの概念が間違って伝わっているのか、というとそんなことは無いらしく、別のコーナーにひっそりと売られていたりするから面白い。
こちらはシールで"Best for SHABU SHABU"と書いてあるし、確かにしゃぶしゃぶに向いていそうな薄さである。こうなるとさっきのSHABU SHABUコーナーは何のためにあるのか、とは思うのだが、そういう細かいところはあまり気にしないのが肝要らしい。
そしてそんな肉売り場でひときわ目を引くのが、
WAGYUコーナーである。
まさかこの米国のスーパーで国産黒毛和牛が拝めるとは思ってもみなかっ
たが、予想通り拝めなかったようだ。
ご存知の諸兄姉もおられるだろうが、ここで売っているのは
AMERICAN WAGYU
なんである。
直訳すると米国の日本の牛肉とでもいおうか。初めて見た時は意味が分からなかったのだが、どうも日本から米国へ持ち込まれた和牛の血統をひく牛肉の事を指すらしい。初めて持ち込まれたのは40年以上も前の事らしい。調べればAmerican Wagyu Associationなる組織も存在するそうで、少なくともH Martが勝手に名乗っているとかそういうわけではないようで一安心である。
これはあまりに気になったので食してみたが、サシがやや少ない和牛、といった印象であった。米国では牛肉といえば赤身肉がメインなので、サシが入りすぎているものは逆に売れないということらしい。筆者も近年は年のせいか脂の多いものはもたれるようになってきたので、アメリカン和牛は意外にも好印象であった。価格は肩の薄切りで100gあたり350円程度だった。
AMERICAN WAGYUに全てを持っていかれてしまった印象はあるものの、他にも例えばラーメンや寿司が独創的な進化を遂げていたり、鉄板料理の事がなぜかHIBACHIと呼ばれていたりと、生活の端々に見える日本語は結構面白いものが多い。
"Lucky Apple"として売られていた林檎。皮の上から文字がプリントされているらしい。こういうのは日本ではあまり見ないが、漢字一文字だけだとこれがどこの国を意識しているのか、俄かにはわからないのが面白い。韓国は歴史の過程で漢字を廃止してしまったから違うと判断できるが、日本語と中国語にはどちらも『福』があるからである。どちらの国においても似たような意味のようなので、どちらにせよ"Lucky Apple"としては成立するのだろうが。