米国はミシガンへ赴任してからというもの、観光地も含めて種々の地へ赴く機会があった。
日本に生まれた日本の筆者(参考URL)が、その過程で様々な違いを感じた事は想像に難くない。
わけても電流が走ったこととして、アンティークモールがやたらと点在していることが挙げられる。
今日の日本においては、意識的に探しでもしない限り、アンティークモールなどそうそうお目にかかれるものではない、と思う。
ところがこのミシガンでは、車を転して行く先々で
『〇〇 ANTIQUE MALL』
といった類の看板が、それなりの頻度で車道の脇に出現するのである。
しかも出現の傾向というのが (少なくとも日本に生まれた日本の筆者には) 皆目もって見当がつかなかったりする。
街はずれだろうが観光地だろうが、何の断りもなく突如出現するのである。
そもそもこのような案内用のHPがある時点で、既に米国ではアンティーク市場が大規模に形成されているのかもしれない。
過去にも垂れ流したが、筆者はものぐさのくせにややこしいものが大好きである。
アンティークというのは筆者からすると『何か古くてややこしいもの』なので、その図式からすると当然好物の類に仕分けされるわけである。
そして本日、小峠をわずかに攻めていた稀代の薄さを誇るペーパードライバーたる筆者の前に、突如舞い降りたANTIQUE MALLがこちらである。
米国の建物(特にミシガン)にはよくある事だが、建物の多くが1階建てかそれに相当する高さしかない。そしてその代わり、やたらと敷地面積が大きい。
このアンティークモールもその例に漏れず、1階建てにして結構な広さを誇っているようだ。
見た目から想像するよりも横幅、奥行きともにかなり広く、その中にアンティークな品々が所狭しと、というよりごちゃごちゃ並べられている。
かなり広いので筆者の乏しい写真スキルではとても納めきれないが、とにかくアンティークらしい品物がこれでもかというほど、ごちゃごちゃと敷き詰められている。
ところで小規模なアンティークモールなどだと、
家具ゾーン
銀食器ゾーン
コップゾーン
置時計ゾーン
コインゾーン…
といった形で、ある程度まとまってレイアウトされている場合がある。
ところがこのモールは、写真からお分かりいただけるかもしれないが、並び順に殆ど秩序がない。
例えば入口に時計がまとまっておいてあるかと思うと、
その左手には何やら空き瓶の類が陳列されており、
その向かいには時計だか食器だかが並び、
もう少し奥に行くと、また食器やら何か掛けるものがあり、
そこから振り返るとまた時計の類が置かれていたりする。
以上のような形で、とりあえず陳列の方法に規則性はなさそうと判断するわけである。
とはいえアンティークモールの性質自体、
『一期一会』
『宝物探し』
といった性質で成り立っている気もするわけであって、これはこれで良いのかもしれない。
むしろ、時間を忘れて探してもらうための店側の試みなのかもしれない、と愚考してみる。
また、恰幅の良いカウボーイ風の壮年男性スタッフから聞いたところによれば、『スタッフそれぞれ持ち場が決まっており、そこの陳列を各々行う』だということらしい。
値付けもその担当者の裁量で決められるものらしく、たまたまその壮年男性の持ち場だったらしい下記のジオラマを眺めていたところ、
「$100へ値を下げる故、是が非でも購入を検討してはくれまいか。何せ見ての通り我が持ち場は手狭、これを諸弁せねばと常々考えておるのだ」
との交渉を持ち掛けられた。
筆者は丁重にお断りしたが、$295が$100になるとなれば恐らくお買い得なのではないだろうか。ちなみに何の建物なのかは不明らしい。
また、これに限らず値切り交渉は歓迎だということだったので、それぞれの持ち場の担当者を探し当てれば、お得に手に入れることもできるかもしれない。
ところでここは米国であるからして、陰険なる筆者は密かにこれを探していたりする。
日本でもミステリークロックの代表格として、極一部で大変知名度のある代物である。
かつて米国で出回った普及品のはずだったので、それなりに数が残っているはずだ…と筆者特有の憶測が止まらなかったのだが、
なんと同じ店内に3つも存在した。
しかも先刻の壮年男性の言を反映してか、いずれも担当が違うようで、全く違う場所に陳列されていた。
加えて言うと、値つけは掲載順に
$35
$150
$185
であった。
一番上の品は電源が壊れているために破格だったようだが、他の2つはあまり状態に差は見られなかった。
内部点検の結果等で$35の開きがあるのかもしれないが、どちらかというと陳列者の裁量違いによるものなのではないか、とも憶測した次第である。
稀に見るほど薄給の筆者としては、$150であってもやや高めではなかろうか、と判断したため今回は見送ったが、交渉手腕に自信のある諸兄姉、あるいは稀に見るほどに富める諸兄姉があれば、在庫のあるうちに挑戦してはいかがであろうか。
系統別・種類別に陳列されていることは当然のこと、としてお店を捉えている場合が多いであろう現代においては、このような大雑把な陳列と言うのは逆に新鮮であったりもするものだ。
特に筆者のようにややこしいものが好きな面倒な愚昧においては、その探すのにやたらと手間のかかる感じこそ、なかなかどうして小気味よく感じられる。
そう言えば過去に、日本のとある店が新業態で出店する際、
それはそれは、
素晴らしい
ゴチャゴチャ感。
といったキャッチコピーで売り出していたような気もするが、このKnightsbridge Antique Mallこそまさしくそれではないか、と愚考しながら後にした次第である。
ともあれ宝探しの旅人に対する下記のような心遣いもあるようだし、近くに立ち寄られた諸兄姉におかれては、一度覗いてみてはいかがであろうか。
Raretsu