モノ魔リスト

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必要ではない。だがよく考えてみると、たしかに必要ではないようだが愛すべきモノたち。

【Apollo manual hand grinder 前編】100を数える選択肢と、奢侈に富む風格を備えしプレミアムなハンドグラインダー

 

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それはGoodに留まらず。あるいはGodをも捉えうる。

 

初めて「千手観音」という言葉に出会った時、筆者ははじめ”千本もの御手をお持ちになる観音様がおられるのだ”と解釈した。まさしく文字通りの、言ってしまえば愚にもつかないほどの解釈であったが、しかしその解釈自体には間違いはなく、数は少ないものの実際に千本の御手をお持ちになられる観音様はおられるそうだ。

 

 

しかし多くの千手千眼観自在菩薩は、視覚的にとらえた際の御手の数というのは42本というのが主流だそうである。というのも、一つの御手で25の世界をお救いになられるため、25×40=1000という計算になるそうだ。加えて前で組まれている2本を加えて、42本となるということである。

 

www.youtube.com出典:むにむに 様

 

また、実際にはその掌にそれぞれ目が付いているそうで、これはどのような衆生であれ余さず救いの手を伸ばしなさるという事だそうだ。

論ずるまでもないだろうが、その差し伸べてくださる御手の多さを目の当たりにしたならば、この愚昧なる筆者であろうとも慈悲の深さを感じずにはいられない。

 

 

 

 

さて、そんな慈悲部深き菩薩様には到底かなうまいが、しかし時として単純な選択肢の多さが功を奏す場面というのは散見される。

そう。

ここまで記載してしまったならば答えを言っているも同然ではあるが、本日は『Apollo manual hand grinder』について極めて個人的な意見の垂れ流しを敢行したいと思う。

 

www.bplus.biz

 

 

 

コーヒーグラインダーの明日を憂うコーヒーグラインダーフリークの諸兄姉には紹介するまでもないだろうが、こちらのアポログラインダーは所謂『大分プレミアムな手挽きグラインダー』である。

 

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非常に質感の良い箱だが、ブルーがベースなのも意外と珍しい気がする。

 

 

 

 

「手挽きグラインダー」というと、脊髄反射的に思い浮かぶのはこのような、昔懐かしいフォルムではなかろうか。

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カリタのクラシックミル。古き良き風貌が実にしっくりとくる。

出典:Amazon

 

この手のノスタルジーなハンドミルだが、意外と購入された経験のある方は多いのではないだろうか。

「知己から土産物として珈琲豆を受領したが、粉砕器具を所持しておらぬ。これ好機とばかりにいくつか見繕ったが、やはり趣こそ肝要だ。」と話す友人もいた通り、この何とも「コーヒーミル」といった風体に一度はそそられるのではないか。いきなり電動のミルを買うという選択肢はやや高くつくきらいもあるし、大体5000円もあれば御釣りをいただけるクラシックなミルは、魅力的に映るのではと推測する。

 

 

 

しかしながら、この手のハンドミルというのは見栄えのポイントが高い一方で、実用性についてはやや辛い傾向がある。個人的に経験談を垂れ流すならば、特に下記の3点がデメリットとしてあげられるように思う。

 

・挽き具合の調整があまり効かない

・一定以上細かく挽けない

・そもそも手で挽くのが面倒

 

1番目と2番目については、ローエンドのハンドミルは構造も造りも大雑把(そこも古き良き、なのだが)なため、ある程度はご愛敬であろう。

3番目については身もふたもない感想だが、実際この面倒くささが勝って押し入れにしまってしまった人は少なくないはず、とこの愚昧なる筆者は憶測を広げる。ちなみにこの手のハンドミルを購入したはいいが、その後1週間かそこいらで匙を投げたのはほかでもない、愚昧なる筆者である。

 

 

そうした後、次に手を出したくなるのは電動式である。電動となると用途や方式、そして価格帯も一気に広くなるが、比較的手を出しやすいのがこの手のグラインダーではなかろうか。

 

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Delongiが誇るKG364Jである。それなりの期間お世話になっているが、機能面・価格面で特に不満はない。

 

性能と価格、扱いやすさも含めてバランスの良い機体で、挽き具合の調整幅もそれなり(14段階)にあり、ついでとばかりにエスプレッソ用の極細挽きにも対応している。そして何より電動なので手間はほぼない。

家庭用として用いるならば、恐らくもって不満は生まれないだろう。

 

 

 

ところが人間とは、かくも業の深き存在である。

こと何かに一度慣れてしまうと、その何かとは異なるベクトルで夢を見たくなるものである。家庭用として見た際、機能的に全く申し分のないKG364Jを持ちつつも、どこか鎌首をもたげる満ち足りぬ感覚とは、先人が遺した言葉通り「趣」への渇望だったのかもしれない。

 

 

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「趣」、つまるところそれは「ハンドミル」への回帰を意味するのではないか。と、この愚昧なる筆者が憶測を立てた先にあった物こそ、件の『Apollo manual hand grinder』なのである。

 

 

 

 さてそんな『Apollo manual hand grinder』であるが、一見すると「ちょっとモダンなハンドミル」といった風貌である。

前述の通り、一般的な粗挽きからエスプレッソ用の極細挽きまでなんでもござれ、という威勢の良さをウリにしている。

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カラーはGrape Champagne Goldを選択している。この手の柔らかな色は、何ともこそばゆく感じられて仕方がない。他にシルバーや黒、赤などもあるようだ。

 

 

 

加えて質感についても一家言あるらしく、回転部分にはベアリングをそれぞれ搭載している。ついでとばかりに、ボディの加工部分はいちいちフライス盤で削っているようである。誇らしげに動画でその様子を投稿しているようだ。

www.youtube.com出典:La Pavoni

 

 

そのボディはどうやらアルミ製だそうで、しかして手にした際の重量感たるやなかなかのものである。

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公称は1030gのようであるが、誤差範囲といったところだろうか。

これら質感と重量が相まみえることで、えも言われぬ高揚感を醸成せずにはいられないのは愚昧なる筆者だけではなかろう、というのは過言かもしれない。

 

 

 

さて、その質感に一抹の恋慕の情すらをも覚えつつも、グラインダーとして求められる性能を冷静に判定する姿勢は崩してはなるまい。

 

まず挽き具合の調整については、よくあるハンドミルであるとハンドルを外してからネジを締めたりするものだが、このアポログラインダーにはそういった分解は不要である。

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分解せずとも調整ができるのは、かなり便利であると評価せざるを得ない。

軸についている目盛り付き歯車のような部品を回すと、小気味よいクリック音と共に調整が可能になっている。時計回りに回せば細かく、反時計回りに回せば粗くなる。

 

 

ちなみに裏面を見ると、回転させた分に応じて刃の位置が変わっている様が観察できる。

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左が最も粗くした設定、右がもっとも細かくした設定である。もっとも、右の状態は細かすぎて挽けたものではないが。



 

そして何より驚くべきは、その調整幅の細かさであろう。

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先ほどの目盛りの拡大。1~10までの刻印がつけられているが、1回転しか回らないということではない。おおよそ2回転+αくらいの可動域のようだ。

 

何故か公式HPでは触れられていないが、一度手に取って回したならば、その小気味よい感覚と共に、実に100段階以上の細かさが選択できるであろうことが伝わってくる。

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この調整幅の広さには、さしものリスも驚きの表情を隠せないと叙述したいが無関係である。

 

正直、調整幅が100段階もあったところで、実際に使うダイヤルは限られてくるのでは、という陰険な筆者の独り言はとりあえず捨て置くべきだろう。何故なら、単純な選択肢の多さが功を奏するという事は往々にして起こりえるからだ。

 

 

よって、後編においてはその選択肢の多さがいかなる範囲に及び、そしてどのように活用できるのかについて、引き続き極めて個人的な意見を垂れ流したい。

 

 

Raretsu